伊藤沙莉主演・朝の連続テレビ小説『虎に翼』
皆さんはNHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』を見ていますか?
私はドはまりして毎日欠かさず見ています。
日本初の女性弁護士、のちに裁判官となった三淵嘉子の実話をもとにした、伊藤沙莉主演の朝ドラです。
SNSなどに熱心な視聴者のコメントが毎日書きこまれています。
5月31日には寅子が河原で日本国憲法を新聞で読むシーンが流れ、初回放送の冒頭に戻ったことを意味し、第二部「裁判官編」がスタートしました。
物語が第1回に戻ったこと、ここから「新しい闘い」「新しい地獄」の第二部がスタートすることを宣言するかのように、ドラマ本編残り2分でオープニング映像が流れるという演出が大きな反響を呼びました。
『虎に翼』主題歌・米津玄師「さよーならまたいつか!」
主題歌を担当したのが米津玄師です。
まさか夜中でばかり生きている自分が朝ドラの曲を作ることになるとは思いもしませんでした。寅子の生きざまに思いをはせ、男性である自分がどのようにこのお話に介入すべきか精査しつつ「毎朝聴けるものを」と意気込み作りました。よろしくお願いします。
引用:主題歌決定!米津玄師「さよーならまたいつか!」 NHKホームページ
「あさイチ」のインタビュー映像で米津玄師は「毎朝聞けるような軽やかさ、かつ爽やかさが必要」という意識で、主人公・寅子の「人生や境遇に思いをはせながら」主題歌を作ったと話していました。
メロディは意識したという軽やかさ・爽やかがありながら、どこか隠しきれない夜の雰囲気、闇の雰囲気が滲みでているような気がします。
寅子の人生や境遇に思いをはせた歌詞は「空に唾を吐く」となかなか衝撃的です。
『虎に翼』は夜のカフェで働く同級生のよねの境遇、逮捕されて裁判にかけられる父親の直言、最愛の夫で寅子の理解者である優三の戦死など、歴代の朝ドラと比べてもなかなかハードな展開です。
その寅子の人生を反映させた歌詞なのでしょう。
米津玄師は音楽ナタリーのインタビューで次のように語っています。
この曲を作るにあたっては“キレ”が必要だと思っていたんです。キレというのは「ブチギレる」とか「怒る」という、強いエネルギーを表す意味でのキレ。
引用:「“キレ”のエネルギー宿した「虎に翼」主題歌 100年先への希望と祈りを歌に込めて」音楽ナタリー
この先の寅子にも様々な困難と地獄が待ち受けているのかなと想像させる歌詞です。
歌詞にはドキッとするようなインパクトのある言葉が綴られています。
下記をクリックすると「さよーならまたいつか!」の歌詞が読めます。
サビの「100年先も覚えているかな」については次のように話しています。
ものすごく遠い未来に憧れがあるんです。100年でも1000年でもいい、ものすごく先。自分も当然死んでいるし、自分のことなんて誰も覚えていない、今の世の中の形なんてまったく失ってしまった未来のことに思いを馳せることがよくあって、そうやっているとすごく安心するんですよね。営みが脈々と受け継がれながらたどり着いた先には、その世界を当たり前として生きる人たちがいる。そのことが自分にとって救いのように感じられるんです。
引用:「“キレ”のエネルギー宿した「虎に翼」主題歌 100年先への希望と祈りを歌に込めて」音楽ナタリー
『虎に翼』オープニング映像
私は『虎に翼』のオープニング映像が大好きです。
着物姿の寅子、女子部の同級生たち、当時の女性たちが働く姿がイラストアニメーションで描かれ、最後は法服の寅子と様々な職業の制服を着た昭和の女性たち、現在の女性たちが踊ります。
「さよーならまたいつか!」の歌詞に出てくる「100年先」に繋がる女性たちを描いています。
下記をクリックするとオープニング映像を見ることができます。
月曜ロングバージョンの1分30秒オープニング映像
朝ドラの月曜日はスタッフクレジットを表示するために1分30秒のロングバージョンのオープニング映像が流れます。
火曜から金曜日のオープニング映像は1分です。
そのため月曜日の放送はその他の曜日にはない映像を見ることができます。
『虎に翼』タイトルバックを手掛けたシシヤマザキ
この印象的なタイトルバックを手掛けたのがシシヤマザキです。
シシヤマザキ プロフィール
引用:シシヤマザキ ShiShi Yamazaki Official Website
水彩画風の手描きロトスコープアニメーションを独自の表現方法として確立。
独特のピンク色を多用した作品は、シシピンクと呼ばれている。
CHANEL、PRADAや資生堂などのブランドのプロモーションイメージの制作を担当し、世界的に活躍。
ステラnetにシシヤマザキのインタビュー『「虎に翼」タイトルバック制作 シシヤマザキインタビュー「ロトスコープという手法の面白さと豊かさが、画面上に結実したと感じます」』が掲載されています。
女学生の寅子が六法全書に出会い、法衣服をまとい、六法全書からきれいな水があふれる描写、月曜日放送90秒のタイトルバックのために約900枚の絵が必要など、興味深い話を読むことができます。
そして驚いたのは米津玄師が書いた歌詞の影響を受けていないという言葉です。
私はいつも、「音の振動を空間で造形しなきゃいけない」という解釈で作品を作っているので、音楽とアニメーションと関係している部分があると思いますが、歌詞からは影響を受けていません。
引用:『「虎に翼」タイトルバック制作 シシヤマザキインタビュー「ロトスコープという手法の面白さと豊かさが、画面上に結実したと感じます」』ステラnet
というのも、その歌詞は、ドラマの世界観や物語を、米津さんの解釈で造形したものですよね。米津さんが歌詞にされた段階で、いったん抽象化が行われていると言いますか。なので、そのワードや意味を汲みすぎてしまうと、ちょっとあざといというか、いびつな感じになってしまうと思うんです。それは逆に面白い形のコラボにはならない気がしたので、歌詞と連動させるよりも、もっと楽曲が帯びているグルーヴといっしょに、映像をどう”躍らせて”いくかを考えました。
米津玄師「さよーならまたいつか!」の歌詞に出てくる「100年先」に繋がる女性たちと寅子が踊るシーンは、歌詞の影響を受けたというよりは、ドラマ制作者に事前に渡された主人公・寅子のコンセプト資料を基に、米津玄師とシシヤマザキが共通したイメージを持っていたということでしょう。
チェッカーズ「ジュリアに傷心」MV制作もシシヤマザキ / 伊藤沙莉とも縁が?
シシヤマザキが手掛けたチェッカーズの「ジュリアに傷心(ハートブレイク)」のMVが2021年に話題になりました。
まだミュージックビデオを作るという発想がなかった、昭和のヒット曲のMVを作っちゃおう、というテレビ朝日の番組「ザ・ニュージックビデオ」の企画でした。
自宅の古民家でシシヤマザキ自身が踊る映像を、固定カメラで撮影し、当時のチェッカーズが歌い、演奏する映像と組み合わせ、ロトスコープアニメーションにする工程が番組で紹介されました。
こちらの『チェッカーズ「ジュリアに傷心」アニメーションMV by ShiShi Yamazaki』でMVを見ることが出来ます。
放送された番組「ザ・ニュージックビデオ」の司会がリリー・フランキーと伊藤沙莉でした。
この番組の数年後、伊藤沙莉主演の朝ドラ『虎に翼』のタイトルバックをシシヤマザキが担当することになります。
伊藤沙莉とシシヤマザキはご縁があったのでしょうね。
『虎に翼』に関しては、放送されたドラマではカットされたセリフやシーンを読むことができるシナリオ集について書いた記事:ファン必読!吉田恵里香『虎に翼』シナリオ集は読み物として面白い もありますので、興味がある方はお読みください。
追記:「さよーならまたいつか!」オープニングタイトルバック・フルバージョン
「さよーならまたいつか!」オープニングタイトルバック・フルバージョンが公開されました。
2024年9月18日にNHK総合にて放送された特別番組『虎に翼×米津玄師スペシャル』の中で初公開されたものです。
『虎に翼』のオープニング映像を制作したシシヤマザキによるロトスコープアニメーションで、現在のオープニング部分はそのままに、楽曲フルバージョンとして新たに制作されました。
今回新録されたカットと『虎に翼』の名場面で紡がれています。
朝ドラ最終回直前にオープニングタイトルバックのフルバージョンが制作されるなんて異例なことですよね。
もしかしたら、初めてでは?
ドラマの『虎に翼』そのものが話題作ではありましたが、米津玄師による主題歌とシシヤマザキのロトスコープアニメーションが好評だったのでしょうね。