花江のセリフに♡マークや♪マークがついている
花江役・森田望智のステラnetのインタビューでめちゃくちゃ気になる発言がありました。
最初にいただいた台本に目を通したとき、花江のセリフのあとに、♡や♪がついていたんです。だから、演じるのが10代からというのもありましたが、「声を少し高く上げた話し方がいいのかな」と思って。
引用:ステラnet「虎に翼」猪爪花江役・森田望智インタビュー「監督から『これは親友のけんかではなく夫婦げんかです』と言われて腑に落ちました」より
「なぬー!セリフに♡や♪がついてるの? だから花江ちゃんの喋り方はあんなにウキウキだったのかぁ」と思いました。
「これはシナリオ集が読みたい! でも、発売されるとしたら『虎に翼』の全放送が終わった後だよなぁ」とちょっとガッカリしてました。
『虎に翼』の小説・上巻がすでに発売されているのは知っていました。
「いやいや、小説が読みたいわけじゃないのよ」「ノベライズは脚本の吉田恵里香さんとは別の人だしなぁ。小説の会話文に♡や♪はつけてないだろうなぁ」と思い、諦めていました。
実は電子書籍で毎週発売されていた『虎に翼』シナリオ集
ところがー! 電子書籍で毎週シナリオ集が発売されていました。
しかも1週間の放送が終わった翌週の月曜日に、毎週発売されていました。
先週のドラマの余韻が残っているなか、放送されたドラマの記憶が新しいうちに先週分のシナリオが読めるわけです。
放送回によってはシナリオを読んだ後に、見逃し配信のNHKプラスでシナリオと完成したドラマとの違いを見比べることもできるのです。
「早く言ってよー!」と思いました‼
いや、告知はしていたのかもしれませんが、全然気づいていませんでした。
……というわけで早速電子書籍で購入して読んでみました。
そうしたら……
花江「女学校在学中に結婚すること♪」
引用:吉田恵里香『NHK連続テレビ小説「虎に翼」シナリオ集 第1週[全26巻]』
直道の声「は~な~え~ちゃん♡」
「うおーっ! 本当に♡や♪が書いてある!」と大興奮しました。
この「♡」や「♪」を表現するために、ドラマでは花江役の森田望智や直道役の上川周作がウッキウキでセリフを喋っていたのです。
『虎に翼』シナリオ集とドラマ放送を比較するとめちゃくちゃ面白い!
電子書籍の紹介文によると……
番組台本のレイアウトそのままに、収録の過程などでカットされたシーンやセリフも余すことなくすべて楽しめる!
引用:NHK連続テレビ小説「虎に翼」シナリオ集 紹介文
読み物として放送とはまた違った趣で、感動の名場面や名セリフなどドラマの神髄を味わえる朝ドラファン必携のシナリオ集。
まさにその通り!
15分の放送に収めるために、残念ながらカットされたセリフを読むことができたり、逆にシナリオにはないけれど、ドラマでは放送されたシーンを知ることができるのです。
「この場面は俳優さんたちによるアドリブだったのかぁ」「おおっ、シナリオにはないけど、この場面はドラマで追加されたシーンなのかぁ」と読み物として楽しめるのです。
第1週の放送では、母親のはる(石田ゆり子)が不在の時に、優三(仲野太賀)が心配するのを横目に、寅子(伊藤沙莉)と父親の直言(岡部たかし)が明律大学女子部に入学願書を出すことを決めて、大はしゃぎをするシーンがありました。
直言「父さんは母さんを~説得ぅ~」
引用:NHK連続テレビ小説「虎に翼」 第1週放送
直言・寅子「(声を揃えて)するー!」
直言「母さんは~父さんに~説得ぅ~」
直言・寅子「(声を揃えて)されるー!」
実は上記のセリフはシナリオには存在しません。
岡部たかしのアドリブに伊藤沙莉が応えた場面がドラマで放送されていたのです。
また、シナリオでは花江が直道に一目惚れした場面を……
花江の声「直道さんがトラちゃんに忘れ物を届けにきたの」
引用:吉田恵里香『NHK連続テレビ小説「虎に翼」シナリオ集 第1週[全26巻]』
やってくる学生服の直道。
直道「ほら、まったくおっちょこちょいだな。トラは」
花江の脳内映像なので、直道はめちゃくちゃかっこいい感じだ。
シナリオでは上記のように書かれた場面を、実際に放送されたシーンでは、掃除中の女生徒が校舎からバケツの水を捨てると、バシャーンと見事に直道にかかってしまい、ずぶ濡れになった直道がバサーッと水しぶきをキラキラさせながら振り返り「気にしないでー‼」と叫んでいました。
シナリオを読むことで「直道はめちゃくちゃかっこいい感じだ」を、ドラマではずぶ濡れの直道で表現したのかぁ、と分かります。
読み物として『虎に翼』シナリオ集はめちゃくちゃ面白いのです!
ネタバレ注意!ドラマでは放送されなかった涼子と玉のセリフが泣ける……
いやー、もっと早くに毎週発売される『虎に翼』シナリオ集の存在を知りたかったぁ!
だってドラマ放送後、翌週の月曜日に先週分のシナリオが読めるのです。
ドラマ放送とシナリオを比較する楽しみが毎週できたじゃないかぁ! と思いました。
このシナリオ集の存在を知ってから第1週から順番に読もうと思ったのですが、第3週まで読んで「これは順番に読むと、現在の放送に追いつく頃には朝ドラの放送が終わってしまう」と思い、最新の週と過去の放送週のシナリオを並行して読むことにしました。
私がドラマのリアルタイム進行と合わせてシナリオを読むようになったのは、第17週「女の情に蛇が住む?」です。
第17週は新潟編の喫茶ライトハウスで、寅子が涼子(桜井ユキ)・玉(羽瀬川なぎ)と再会するシーンからスタートします。
『虎に翼』は複数のストーリーが進行し、一見関係ないようなエピソードが複合的に交わるドラマです。
特に第17週は涼子・玉との再会だけではなく、稲との再会、優未の「私、友達いないよ」発言、美佐江絡みの少年事件が起こり、美佐江が寅子の赤い腕輪を引きちぎり、杉田弁護士の麻雀大会での号泣、航一による謎の「ごめんなさい」など、いろいろなストーリーやエピソードがてんこ盛りでした。
そのため放送されたドラマでは、セリフがカットされたり、変更されていたりということが多い週だったようです。
第17週の放送を見た時に所々「うん?」「何故そうなったの?」と若干疑問に思うところがあったのですが、シナリオを読むと「なるほど、そういうことだったのね」と納得しました。
【疑問①】
足が不自由になった玉と喫茶店を経営して生きていくことを涼子は決意するけど、なぜ喫茶店なの?
お嬢様育ちの涼子が、いきなりお料理を作る仕事ができるの?
この疑問への回答は……
涼子「花嫁修業でお料理は一通り学んでいましたのよ? ただ腕を振るう場がなかっただけで。ねぇ」
引用:吉田恵里香『NHK連続テレビ小説「虎に翼」シナリオ集 第17週[全26巻]』
【疑問②】
東京大空襲で腰を強く打ち、足が不自由になった玉を受け入れてくれる家族はいないのか?
玉は天涯孤独なのか?
この疑問への回答は……
玉「……私は両親に手紙を出しましたが、帰ってきても面倒はみられないと」
引用:吉田恵里香『NHK連続テレビ小説「虎に翼」シナリオ集 第17週[全26巻]』
玉「これ以上迷惑をかけたくなくて、私は両親が家に帰って来いと言っていると嘘をつきました。お嬢様は新潟の別荘を売却するついでに私を送り届けてくださると仰いました……でも」
玉「お嬢様は私の嘘を見抜いていたのです。私なんて見捨ててくださればよかったのに!」
上記のセリフは残念ながらドラマではカットされていました。
ドラマで見た時も胸が締め付けられましたが、シナリオでこのセリフを読んで涼子と玉の思いを知り、更に切なくなりました。
次に紹介するのは涼子と夫の胤頼との夫婦関係を語るシーンです。
「胤頼様はお気立ての良い方でしたが、最後まで、本当の意味では夫婦にはなれませんでした」というセリフの後に、ドラマではカットされた次のセリフがシナリオに登場します。
涼子「苦楽を共にした、大切な方ではあった……特別だけれど、玉やトラコちゃんと同じ特別でしたの」
引用:吉田恵里香『NHK連続テレビ小説「虎に翼」シナリオ集 第17週[全26巻]』
涼子「特別だけど、胤頼様に胸の高鳴りや嫉妬心、特別な感情を抱くことができなかった」
涼子「結局の所、わたくしの人生にその類のものは不要だった」
『虎に翼』は過去の吉田恵里香脚本のドラマとリンクしている
15分の放送の尺に収まりきらず、泣く泣くカットしたセリフかもしれませんが「わたくしの人生にその類のものは不要だった」は、涼子を表すのにとても重要なセリフだったと思います。
おそらく、このセリフは2022年に放送された吉田恵里香脚本のドラマ『恋せぬふたり』で描いたアロマンティック・アセクシュアルを意味すると思うのです。
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岸井ゆきの×高橋一生 W主演のドラマ『恋せぬふたり』は、恋愛感情を抱かない、性的に他者に惹かれないアロマンティック・アセクシュアルを主人公にしたドラマです。
吉田恵里香は『恋せぬふたり』の脚本で第40回向田邦子賞を受賞しています。
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その他にも過去の吉田恵里香作品とのリンクが感じられるシーンが『虎に翼』に登場します。
轟(戸塚純貴)が花岡(岩田剛典)への思いを、よね(土居志央梨)に吐露するシーンが「朝ドラで同性愛を描いた!」と話題になりました。
吉田恵里香は、映画化もされた人気BLドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』の脚本を担当しています。
寅子はお月のものが重く、生理になると4日間寝込むシーンも話題になりました。
「朝ドラで生理を描いた!」「女性が主人公なのに、今までの朝ドラで生理を描かなかった方が不自然だった」と反響を呼びました。
吉田恵里香はNHKドラマ『生理のおじさんとその娘』で、生理用品メーカーのサラリーマンとその娘の葛藤を描く脚本を手がけました。
このように『虎に翼』で話題になったシーンは、過去の吉田恵里香脚本のドラマにリンクしています。
そう考えると涼子の「わたくしの人生にその類のものは不要だった」はカットしない方がよかったのではないかと思うのですが………。
このセリフは涼子が性的に他者に惹かれないアロマンティック・アセクシュアルであることを意味しているのかもしれません。
もしかしたら、あえてカットしたことで視聴者に涼子と玉との関係性の想像の余地を残したとも言えます。
涼子を恋愛感情を抱かないアロマンティック・アセクシュアルとして描くと、涼子と玉のシスターフッドは、寅子と花江のシスターフッドのような、友情としてのシスターフッド、同志としてのシスターフッド、家族として支えあうシスターフッドということになります。
アロマンティック・アセクシュアルであるかもしれないセリフをカットしたことで「恋愛としてのシスターフッド」の可能性が出てきます。
第17週のドラマ放送時、玉が涼子のことを「お嬢さ、じゃなくて涼子ちゃん」と呼ぶと、涼子が照れたような、はにかんだ笑顔を見せたことで、「涼子様可愛い!」「涼子様が付き合いたての彼女のような反応をしてる」と話題になりました。
尺の都合でカットしたのかな、いやいや、演出の意図でカットしたのかも……と色々想像するのが楽しいのです。
このように『虎に翼』シナリオ集は読み物としてめちゃくちゃ面白い!
この記事の執筆時点(2024年8月11日)で、ドラマの放送はあと6週で終わってしまいますが、ぜひ『虎に翼』のドラマ視聴とシナリオ集を同時に読むことをお勧めします。
何倍も『虎に翼』を楽しむことができます!
「トラツバ」ファンは『虎に翼』シナリオ集必読ですよ!!
『虎に翼』に関してはこちらの記事:朝ドラ『虎に翼』チェッカーズ「ジュリアに傷心」意外な共通点 で、シシヤマザキが手掛けた『虎に翼』のオープニング映像のタイトルバックについて書いています。
興味がある方はお読みください。
【追記】数量限定『虎に翼』プレミアムシナリオ集発売決定!
な、なんと、電子書籍での『虎に翼』シナリオ集の売り上げが好調、反響の大きさにより、書籍『NHK連続テレビ小説「虎に翼」シナリオ集』の緊急出版が決定しました‼
NHK出版より10月21日に発売です。
現在、各オンライン書店および書店店頭にて予約受付中とのこと。
番組・業界関係者からの特別寄稿や、著者自らによる全週ストーリー解説、直筆サイン、購入者全員招待のオンライントークイベントチケットなど豪華特典付き。特製ケース入りの特別仕様で贈る数量限定のプレミアムなシナリオ集だそうです。
2冊組のシナリオ集には、脚本家・吉田恵里香さん自らによる全週分の読みどころを綴ったストーリー解説やあとがき、『ちゅらさん』『ひよっこ』の脚本家・岡田惠和さん、『【推しの子】』の漫画担当・横槍メンゴさんなどによる特別寄稿もあるそうです!
特製ケースに収め、2冊合計で1024ページに及ぶ重厚さに加え、表紙にはクラシカルなデザインの箔押し加工を上品に施しだそうです。
いまどき珍しい豪華な書籍です。
生産数量限定(売り切れ次第販売終了)とのことですが、購入を悩むなぁ。
なぜなら既に電子書籍でほとんど購入済だからです(笑)
しかも、それなりのお値段だし……。
うーん、でも吉田恵里香さんによるストーリー解説は読みたいなぁ。
しばらく悩むことになりそうです。